「大怪獣のあとしまつ」の感想をまたもやネチネチ書いてみた。【全シーン書き出し】

大怪獣のあとしまつ


昨年末にアマプラにやって来たので、この問題作を全シーン見届けて、その上で感想を述べていきたいと思います。
基本的には前に書いた「少林少女」の時のように、どういうシーンが有ったかをつぶさにメモって、都度感想が挟まっていくスタイルになります。
つまり超長くなります。あと完全にネタバレしています。
それではスタート。

 

  松竹、東映ダブルネームである。
CGの爆発。AKIRA風。真ん中から光の柱が立つ。
  まさかこれが説明だったとは。最初流して見ちゃったよね。
爆発をバックに人影。ナレーションと文字が出る。
「突然の静寂。怪獣と呼ばれる人類を未曾有の恐怖に陥れた巨大生物が不可解な死を迎えてから十日あまり。歓喜と安堵、熱狂と言う非日常敵感情は新たに始まった日常に内包されようとしていた。」
「そして死体が残った。」
  これで何かわかるだろうか?
そんでタイトル。
街の鳥瞰図。大きな飛行機の影が地面に落ちている。無線の音声が入るが言葉は聞き取れない。
走ってくる子どもたち。
  なぜそこで立ち止まるかを説明するカットは無い。
  二番艦という言葉はここで出てくるが、一番艦はどうしたのか、二番艦自体がどういう役目なのか、またその姿が写されることはない。
学校の教室のような場所、スクリーンにスライドショーが写り、黒板にいろいろなメッセージが書かれている。
この教室からも二番艦が見えているらしい。何の集まりなのかはここでは説明されない。どうやら「怪獣対策隊に徴兵」された人の壮行会が何故か学校で行われており、なおかつ怪獣はすでに倒された後なので本来の趣旨とは外れてただの同窓会になってしまった、という話であるらしい。
  なおここで壮行会の対象になっている若い男はもう二度と出てこない。
警戒警報と思いきやただのいたずらというシークエンスがあるが、これも特に後の話に関わったりしない。
主人公山田涼介とヒロイン土屋太鳳が登場。徴兵されかかった男と同級生か何かだったようなのだが、彼らは既に政府側として怪獣対策に関わっており、主人公は呼び出しを受けてバイクで移動する。
「私はいつも置いてきぼりか……ご武運を。」というヒロインの台詞には含みがありそう、というか実際あるのだが、核心に触れる事は無い。
ここで状況説明が入る。
色々なニュース映像やPOV風の映像がカットアップされるが、ナレーションがどの層にあるのか分かりづらい。
福島の原発事故を思い出さざるを得ない描写。
過激派っぽい人が立入禁止区域に一人で暴れこんで取り押さえられるシーン。
電気店のテレビの画面が環境大臣の声明を伝えるニュース映像一色のシーン。
「不安ですよね……、いつになったらもとの生活に戻れるのか……」
「政府は引き続き、国民に不要不急の外出を控えるように呼びかけています」
「新しい、新しい日常って、何なんですかね」
インタビューやアナウンサーの声はコロナ禍を想起させる言葉。画面は人の居ない街を次々映し出す。
「全国各地では、怪獣対策隊として出征していた若者たちの帰還が始まっています」
女性レポーターのバックには喜び抱き合う人々。
首相会見の音声をバックに、不穏な街のカットが映っていく。バンクシー風の落書きあり。
土屋太鳳が自宅に帰ると夫の濱田岳が居る。
濱田岳、特務隊などについて説明しまくる。
日本人離れしたキスシーンあり。
現場に急ぐ山田涼介。
ドローンを撃ち落とされて悔しがる迷惑YouTuberの染谷将太
  顔に特徴が書き込んであるキャラなんだからここでもっとちゃんと顔を写しなさいよ。
到着した山田涼介にドローンを撃ち落としたスナイパー女性隊員がぼやくシーン。この女性隊員、山田涼介のバディとしてこの後もちょくちょく行動を共にするのだが、その関係性について説明するシーンはない。
  あえてここで言うけど、じゃあ怪獣が暴れていた時はどうなっていたのか。その時の映像は一切出てこない。
  怪獣の死体が突然現れたみたいになっているし、2匹目の怪獣を想定するキャラクターも全然いない。
ここで特務隊とは、の説明が入る。ここのナレーションはタイトル前と同じ人。おそらくこの声だけが物語の外からの声である。
自衛隊じゃなくて国防軍なのはここで分かる。
「また会う日まで」を口笛で吹く首相、西田敏行
総理秘書官の濱田岳との2人芝居。
計画停電」という言葉がまたもや東日本大震災を思い出させる。
怪獣が通常兵器を一切受け付けなかったらしいこともここで語られる。
ここで唐突な「デウス・エクス・マキナ」への言及。
  デウス・エクス・マキナってそういう意味だっけ?
「あのさあ……、朝、玄関開けたら、何の動物が死んでたらイヤかな?」
  たぶんこの下りのような、気の抜ける瞬間こそが監督の得意とする所なはず。
  今回画面の作りがずっとシリアスなので、どうにも乗っていけないのが問題。
隊長のもとへ向かう山田涼介。このスローモーションはカッコイイけど意味は分からん。
地図をバーッと広げるシーンもカッコイイけど、地図を使って何かを説明するわけではない。
怪獣の死体の腐敗が始まっている事が説明される。
首相側のカット。大臣たちが集まっている。
大臣たちが揃って作業着なことに突っ込む首相。ツッコミを受けてワイワイやるシーンに結構な秒数が割かれている。
各省庁どうしで死体処理の押し付け合いが始まる。
一級河川上にあるから国交省とか燃えるゴミだ燃えないゴミだ、そんなら厚労省だ、文科省が標本にしたらどうか、そんな大きさの博物館は無い、文科大臣は困るとトンボ顔になる、それはシオカラトンボか、えっどですかでん? もういいよにしません?
  全く本領発揮である。これがやりたい映画なんだよな。
  それはともかく国会じゃなくて密室での閣議で全部決めようとする辺り、予算不足のせいかもしれないがイヤな感じにリアルになっててこれは本当にイヤ。
まずは安全宣言、でお開き。メディアスクラムに会う環境大臣ふせえり
会議後の首相と国防大臣の会話で、国防大臣が誰にも通じない例え話をする天丼が始まる。キャラ立ちしていい要素だが、他のキャラもたいがい的はずれなことばかり言うのでどうも埋もれがちになる。
「ゴミ処理」担当者は濱田岳の首相秘書官が山田涼介を指名済み。
西田は浜田に「君は特務隊の味方なのか、それとも……?」と問いかける。低音が持ち上がって緊迫感を演出する。だからといって首相が何か考えているわけではない。
アメリカ大統領からのホットラインが入ってその話は中断。
いっぽう現場。山田涼介は自分が責任者に任命されたことを訝しがる。
「仮に私が消えても大丈夫、一回消えた人間ですから。」これがどういう経緯だったのか分かるまでけっこう長い。
環境大臣ふせえりと秘書官の土屋太鳳が現場に赴く。
  土屋太鳳と山田涼介は壮行会以来の再会、双方微妙な表情をしてみせる。要るかこのシーン?
山田涼介、土屋太鳳、ふせえりでヘリコプターに乗って怪獣の死体ポイント上空へ向かう。
ここで観光大臣とその秘書官は、怪獣の死体の思った以上の大きさに驚く。今かよ。案外そんなもんなのかもしれんが。
  それはともかく、ここで怪獣の死体の周りをぐるーっと回ってみせるのだが、そのスピードが案外早いのでむしろミニチュア感が出てしまっている。
閣議シーン。
遅れてきた環境大臣の、思った以上に大きい、という言葉から、環境大臣が撮ってきた画像を見て「えーっ!」「でかい!」と驚く皆さん。
  実物を見て驚くんなら分かるけど、映像で驚くんなら、暴れてる時点での怪獣をそれまで誰も見てないって事にならないか?
防大臣が「よーし本気出しちゃおうかな……。我が軍の、軍事衛星の画像がこれ」と出した映像が案の定間違いというギャグ。
  怪獣の死体の全景、内閣でもここで初出しって事? さっきサーモグラフ見てたよね?
嶋田久作が奇声を発するシーンでの細かいリアクション、とても細かい小ネタがありそうだが確認できず。
怪獣の経済効果の話になる。なるまでのやり取りがウザい。
ここで「痛いニュース」レベルの(どこの国とは名言しない)韓国いじり一発目。「隣国:怪獣の死体処理 責任は日本に」
特務隊、ボートで死体に接近「死んでますね、予想以上。 家具屋で見た家具を家に入れてみると意外とデカイみたいな」
  こういう無意味な例え話を言う人がそこここに居るから国防大臣(岩松了)のキャラが立たない。
腐敗による隆起が発見されて、ちょっと棒でつついたら簡単に破裂する。隆起の全体像は写されない。膿みたいな液を浴びてクサい目に合う隊員たち。
AKIRAのミヤコ様みたいな教祖とその信徒集団が街中を練り歩く。警官隊がせき止めようとしているが、どこへ行こうとするのを止めているのかは分からない。
環境大臣は安全宣言を出し抜くために画策している。ここのシーンは全くシリアスに描かれている。
二番艦が戻るらしい。やはり二番艦は写らない。
国防軍幹部から突き上げを食らう国防大臣。ここでも絶対にピンとこない例え話を決めて周囲が困惑するギャグあり。
怪獣の腐敗した体液を浴びた隊員がシャワーを浴びるシーン。とくにサービスカットではない。
特務隊の科学調査室で土屋太鳳が知り合いを見つけて一生懸命手をふるがさっぱり気づいてもらえないギャグがひとしきりある。
その後かなりいじましいやり取りあり。
閣議シーン。かなり新喜劇感のあるやり取り。むしろ「トークサバイバー」の感じに近い。
「じゃ一体誰が女王様なんだよ!」元ネタがわからん。
国務大臣の謎例え話あり。
「今日も、暑くなりますからね」「あ゛ーっ! とぼけた味わいも結構ッすねえ!」小津安二郎ネタだろうか。
わーわー言いあって首相が「もう、充分だねーーー!」と叫ぶ。
また特務隊本部、土屋太鳳に情報をリークした女子隊員、濱田岳に未確認の菌糸の情報を渡す。脈絡のないキスシーン。だってこの女の人もう出てこないんだもの。濱田岳がどうやって取り入ったのかを説明しているつもりなのかもしれないけど、それなら書類を見せる前にキスするべきじゃないか。
首相の安全宣言会見直前に濱田岳から謎の菌糸の話が伝えられるが、勿論この期に及んで安全宣言を中止はできない。
浜「やたらと国民を不安に陥れることがないように、善意ですか?」西「ああそれ。全ては、国民の知らなくていい権利のため。」
  こういう風刺をやるんなら、ここで発表しなかった菌糸のために後でマジ大変なことにならなきゃダメなのよ。
首相による安全宣言、環境大臣自ら安全を証明します、で中継画面に。
怪獣の死体の上に立ち、語りかける環境大臣ふせえり
布施えり演じる蓮佛百合子という人物像は、複数の女性議員のイメージが集合している。強気で切れ者で功を焦る感じ。
「世界中の子供に、見せてあげアタタい」と噛むのは果たしてギャグなのかどうか。怪獣の傷口に落ちていく時の「高らかにアーッ」の感じは流石でしたが。
  落ちたあとパンツ丸見えになるシーンは要らんかった。心底要らんかった。パンツ丸見えがアップになって街頭ビジョンに映し出されるシーン、西田敏行のリアクション、ここまで全部要らんかった。
  「痛いニュース」レベルの(どこの国とは名言しない)韓国いじり二発目。「怪獣死体の返還を要求」
怪獣に名前をつけようという話になる。
怪獣命名会議にえらい人数が集められる。取り仕切るのは国立国語学研究所の「金田 一」。「有識者」って書いてあるリボン徽章はちょっと笑った。
一方現場。
ドリルドライバー的なもので穴を開けようとしているが、画面は暗く、怪獣の上なのか傷口の中なのか、皮膚を掘っているとしたら通常兵器を受け付けない設定はどうなったのか、判然としない。あけた穴から紫色の液体が吹き出す。爆発の危険があるという話。
官房長官会見、怪獣の名前が「希望」に決定する。
  皮肉なんだろうけど、どこに効いてるのかどうもピンとこない。
現場。死体処理の指揮のために急遽国防軍から派遣される菊地凛子
  「怪獣退治の専門家」という言葉をどこかで使いたかったらしい。
特務隊を任務から外すのか指揮下に置くのか、イマイチはっきりしないけど後者らしい。
怪獣の死体を凍結するというが、特務隊は全く乗り気にならない。
  ここでなぜ冷凍みかんの話なんかするのか。それは監督の持ち味だからである。
山田涼介が国防軍のエラい人に嫌味を言ってケンカになりかかるシーン、誰の何がどうなってるのか一切わからない。
  アクションを撮るって大変なんだな。こんだけのことでも。
閣議シーン。ここまで来るとだいぶ新喜劇感は強まっているが、ここで話されているのは怪獣に大きな隆起ができているという事である。
隆起は前半に出てきてはっきり写されなかった、臭い膿の溜まった隆起と同じタイプのものに見えるが、断定はなされていない。
一方現場では凍結作戦が否応なしに進んでいる。
「吹き付ける たびに冷やつく 希望かな」菊地凛子のキャラがわからん。
足場が組まれて冷却作業が進むが、死体内部から熱が上がってうまく行かない。大型の隆起は風船のように膨らみ巨大化して爆発寸前。
閣議ルームに山田涼介の中継が繋がり、死体に穴をあける許可を求めてくるが、内閣では判断が下せないでいるうちに、巨大隆起は爆発する。のだが、ここでなぜか画面がモザイク処理されている。意味は分からない。
爆発してどんな被害があるかと言えば、なんか黄色いガスが噴出されて、強烈にクサいという。もうクサい一本で行くのかこの映画は。
環境大臣、どのような臭いなのか明言を迫られる。
ウンコかゲロのような臭い。
ウンコなんですか、ゲロなんですか。
確認中です。
  「痛いニュース」レベルの(どこの国とは名言しない)韓国いじり三発目。「怪獣悪臭に断固対応 返還要求から一転」
閣議ルーム、ではないな。ちょっと小さめの部屋で閣議
冷凍作戦失敗の責任追及の話にはならない。
ウンコなのか、ゲロなのか、一応国民にお示ししないと。
銀杏の臭いだということです。ざわざわ。
  どうやらクサい話一本で行く感じである。俺その笑いはそんなに好きじゃないなあ。
結局現場に出張ってくる濱田岳。山田涼介との再会って、なんで今頃そんなシーンをやっているのか。
ここで2年だか3年前の回想シーン。
特務隊員の土屋太鳳と濱田岳は謎の光球を追っていた。規律違反らしい。
スローモーションばっかりでよく分からんが、地上に落ちてきた光球に山田涼介が突っ込んでいって、画面が真っ白になる。
路上にバイクだけが残されて消える山田涼介。
ここで濱田岳は事故停車した車に足を挟まれて、そのせいで義足になっているのだが、義足をバラすシーンはずーっと後、土屋太鳳に負い目があるのか? だから自分と結婚を? とか言った後である。なんでよ。
回想おわり。
腐敗隆起問題は未だ解決しておらず、さらなる爆発があれば被害地域は拡大、さらに大きな地域が、
敷島隊長「銀杏の匂いに覆われる」
浜田「敷島くん、本気であれが錦南の臭いだと思っているのか?」
敷島隊長「いや、俺は……、天音さん、余計なことを言わせないで下さい」
  渋い演出で間抜けな会話をするギャグとは分かっているが、結局いまの問題って悪臭でしかないのか?
ここでヤミクモ氏(松重豊)登場。排煙装置の原理を使って、腐敗隆起に穴を開けて、腐敗ガスを成層圏に逃がす方法を申し出る。
「直接ダイナマイトを腐敗隆起に仕掛けるか……。それが出来るのはあの人しかいない。」
  この映画、松重豊の出てるシーンが一番おもしろかったかも知れない。
この後官房長官主導のダルいやり取りが続く。 六角精児だからって、急にこれやって許されるほどキャラが強くないと思う。
環境大臣オフィス。
土屋太鳳「このままここで腐らせるわけにも行きませんよねえ」
ふせえり「ホンネを言えば観光資源ったって、ウンコみたいなもんだよ」
土屋太鳳(……ウンコ……)ハッ。「待って下さい、今、何て?」
「ウ・ン・」「それですよ!」
「水洗トイレは何故あるか」
「えっ」
「汚物を水に沈めると、臭いの拡散を防げるからです。希望を海に沈めれば……」
「海に沈める……?」
  これも渋い演出で間抜けな会話をするギャグなんだろうか。今ここでは問題は臭いでしかないが、いやそれは臭いだってバカにすることはないが、何しろ臭いでどんな被害が出ているかの描写が、現場で特務隊がクサいクサい言ってる以外に何も無い。ふせえりがクサがられているシーンぐらい有っても良かっただろう。
  あと一個目の隆起のときに資産価値がどうとか言って揉めたけど、その件はもう良いの? 海に沈めちゃったら資産価値どころの話では無くなるのでは??
で、話はダム爆破に。爆破と言えば行き着く先は同じ。モヤモヤしますね。
「やはりあの人の技術が必要だ。君なら、居場所を知ってるよね。」
「……お兄ちゃん。」
「うまく行ったら、あなたの秘密を教えてくれる?」
「秘密?」
「3年前、どうして姿を消したのか」
「それは……」
「じゃあ、これからも好きの残骸をかかえて行きていけっていうの?」
「……分かった。じゃあ、よろしく頼む」
からのキスシーン。ダメでは?
「今でも愛してるわ」ダメでは?
そして情報は濱田岳にも筒抜けだった。ダメなのでは。とはいえこの映画で揉め事に発展することはない。
濱田岳は、何らかの研究所に怪獣死亡時の画像解析を依頼していた。
そして山田涼介と女性隊員でブルースの元へ。特務隊は辞めたが、爆破の仕事は現役で続けているらしい。それでどうやって行方不明になるの。

殴られるわダイナマイト投げられるわでほうほうの体で帰る。土屋太鳳が話をつけてくれるんじゃなかったのか。
回想シーン。
土屋太鳳の母、老けすぎでは。
そしてその実家、海の近い高台にあってアメリカにあるような風力ポンプが立っている。どういう家だか分からん。
そして現代。食堂で母の写真を見ながら飯を食うブルース。
避難地域拡大のニュースに食堂の娘が「こんなんじゃどこへも帰れねえ」とぼやく。
その目に決心を浮かべるブルース。
特務隊のヘリに乗って現場にやって来るブルース。その後ろから脈絡のない派手な格好のダンサー二人が入ってきて何か踊っている。
  だから前触れなしに急に一個だけZAZやっても付いて行けんのよ。
ダムを決壊させて怪獣の死体を海に流す計画の説明中、濱田岳が「水洗便所は臭いが少ない、というわけか」と前にやった説明をさらに重ねる。
  普通そこまで説明したらその計画は遂行できなきゃダメなんですよ。
ダム決壊作戦は国交省の横やりが入りかけるが、結局その場の話だけで収まる。ふせえり歌い出す。
銀杏の匂い問題が再燃。付近住民による銀杏の匂い撤回要求デモが起こる。
  基本デモとか社会運動をからかうのは、弱者の方に軸足を持っている人でないと難しいと思う。そういう手付きじゃないんだよなどう見ても。
ダムバスター作戦の説明シーン。具体的な内容は分からんがオダギリジョーが画面を保たせている。
西田敏行の悪人っぽい演技も良い。
  笑いのない部分は結構見れるんだよな。
ダムバスター作戦遂行シークエンス。爆薬を仕掛け、住民を避難させる。
住民退避をシカに化けてかいくぐる迷惑YouTuber染谷将太。出てくんの久しぶりすぎて同一人物なの気づかなかった最初。「ギリギリアウトの男」とかキャッチフレーズがあるなら、最初のときにも言っておけば良かったのに。
いよいよ爆破秒読み。しかしここでアクシデント。捨て身の行動に出るブルース。

  捨て身の行動に出ると言っても、具体的にどんな危険を冒すのか、どうなると危ないのかは一切分からない。ただオダギリジョーの覚悟を決めた演技と山田涼介の心配そうなリアクションがあるだけである。

土屋太鳳が心配げに見守る中(退避しなさいよ)ダムは無事決壊(ダム決壊のスペクタクルはない。河が増水する事で表現している)破裂寸前の死体に水が押し寄せる。ここまで笑いなしなのが振りだとは思っていたけれど。

一瞬動きかけた巨大な死体。だが水が怪獣の口(口だよねあれ? もうちょっと分かる角度無かったんかな)に入り込み、怪獣の体が膨らむ。
プーッという音とともに隆起がお祭りで売ってる音のなる風船(毛笛って言うらしい)のようにブルブル震えながら縮んで怪獣のケツのあたりから黄色いガスが噴出して終わり。つまり死体を押し流す作戦が失敗して臭いの被害が広がってる筈なんだが、それを説明するシーンはない。
失意から哄笑する濱田岳
迷惑YouTuberが土手のあたりでなんかヌルヌルに包まれて苦しんでいる。そのヌルヌルはどこから出てきたんだ。
  全く納得の得られないまま進んでいく一連のシーン。隔靴掻痒とはこのことか。
計画失敗の余波で現政権に見切りをつけ保身を画策する閣僚たち。
病院に担ぎ込まれているブルース。
「私達、解任されるよね」
「おそらく。もう俺にできることはない」
  それで被害地域は拡大したの? のたうち回るYouTuberしか見てないんだけど。

ガスを噴出していったん縮んだ腐敗隆起は、また新たに膨らみはじめたようだ。今この時何が問題なのか確定させるシーンを省略するクセがあるなこの映画。

首相官邸では一旦無かったことになっていた松重豊案がうやむやのうちに採用され、濱田岳の指揮のもと遂行される流れになる。
西田敏行の「ハイ!」ていう返事が面白いかどうか、もう分かる感じではない。
ここで菌糸の話の続きがある。研究機関のバイオハザード部屋に運び込まれていた迷惑YouTuber染谷将太
  ここの研究室に入っていく物々しい描写とか良いんだよな。
染谷将太はありていに言ってマタンゴになっていた。
この辺のキノコギャグは思い返すだけでも悲しくなるのでいちいち書かない。ふせえりの「おっとぉ〜」がいい塩梅だっただけに悔やまれる。なんでもう一回やるの。
土屋太鳳と濱田岳の会話。「選ばれしもの」という思わせぶりな言葉。
濱田岳、怪獣死亡時の画像解析を依頼していた研究所に再び。ここで金属探知機に引っかかり義足であることをバラす。
土屋太鳳は実家に戻っていた。老けすぎの母は亡くなっていたようだ。
山田涼介が現れて、今度のことが終わったらすべて話す、と約束する。
  夕日に染まる怪獣の死体とか、被災地の遠景とかやけにできが良いんだよな。
特務隊の車で何やら距離を測っている山田涼介たち。
キノコまみれになったYouTuberの画像をネットに放流、環境大臣の机に辞表を置いて退出する土屋太鳳。
現場に行って濱田岳に作戦の一旦中止を訴えるが却下される。結局ヤミクモ氏の反対していた、ミサイルによる穿孔を取ったようだ。
官房長官六角精児、メディアスクラムに合う。ところでこのメディアスクラムも繰り返しのギャグとして表現されている。回数ごとに密度が高まり、いまや全体的に回転している。「やめてー、やめてー」って今頃横山弁護士ネタじゃあるまいな、まさか。
一方また現場。山田涼介&スナイパーが様子を見ていると現場のみなさんが総員退避を始めている。山田涼介とも知らず「何やってんだ」とか話しかけてくる隊員がいる。
キノコ情報の拡散でパニックが起きてるいるようだ。
バイクで飛ばす山田涼介「ありがとう ユキノ」とつぶやく。
ミサイル発射の指示が出る。
キノコの件で荒れまくるTwitterのTLを眺める首相。意味もなく走り回る官房長官六角精児。環境大臣におそいかかる国防大臣。スローモーションで投げられる国防大臣。ここは何がしたかったんだ。
ミサイルの準備中、怪獣の上に人の姿が。山田涼介である。
ブルースによる穿孔排気ランチャーの使い方と位置の指示があった回想が入る。

  アイテムの存在からまるごと後出しかよ。

土屋太鳳、スナイパーそれぞれミサイル発射阻止に動くのだが、ついに首相によるミサイル発射許可が出てしまう。
山田涼介による2つ目の穴が開けられ、ヤミクモ氏の言うような気流が生まれかけている。残りはテッペンを残すのみ。
怪獣の皮膚をよじ登る山田涼介。途中ずり落ちかけたりして気分が高まる。
「まだ、上部に人が」「かまわん、撃て」
ミサイルが発射されてしまう。
隆起のテッペンにたどり着いた山田涼介。手首にキノコが生え始めている。キノコをむしり取っているとミサイルが迫ってくる。
そのミサイルを迎撃する謎のロケラン。撃ったのは相棒のスナイパー。爆風を受けよろめく山田涼介。
バイクで駆けつける土屋太鳳「もう、置いてきぼりは許さない」とはいえ何ができるんだこの人は。
本部に連絡「アラタが上にいるのよ、ミサイルは中止して」「彼なら大丈夫だ」「どうして」通信切断。
濱田岳「お前が何者なのか、見極めるときが来た」
山田涼介は結局上部の穿孔ポイントも位置どおりに決めて、予定通りの気流が発生し始めるが、無情にもミサイルは発射されてしまった。爆風に煽られ、落下する山田涼介。
地面に落ちる山田涼介を目撃し、泣き叫ぶ土屋太鳳。
相当な高所から落ちた筈なのにむっくりと立ち上がる山田涼介。
近づく土屋太鳳を制止する山田涼介。
ニッコリ笑うと、スマホ状のものを掲げる山田涼介。
デウス・エクス・マキナ」と唱えるとそのスマホが激しく輝く。
画面が光りに包まれ、何も見えない。濱田岳「やはり、そうか」
驚いて見上げる土屋太鳳、巨大な人型の影が立ち上がる。

「選ばれし、もの」
巨大な影が怪獣の死体を持ち上げ、上空に飛び上がる。なおその姿は見えない。
首相「皆さん、神の光です」
土屋太鳳「ご武運を」敬礼
おわり。
スタッフロール後、あとしまつシリーズ第二弾の告知が。ほんとにやるのかな。

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いやーこれで話が通じると思っちゃいかんですよ。
目まぐるしく場面転換するのも、一個一個集中してやると手薄に見えるから小分けにしてるだけじゃないの。考察の余地を作りたかったのかもしれないけど、見せるべきものをことごとく見せないやり方には疑問が残る。

例えば謎の他殺体が次々見つかる中、警察の捜査も探偵の推理も全部外れて万策尽きる話をサスペンスだと思って見てて、最終カットで実はぜんぶサメのせいだったと分かるみたいな、しかもサメは写らないで終わるみたいな、そういう脱力感がある。

政治風刺や世相風刺、細かいパロディなど色々入っているらしいですが、まずメインのストーリーがどういう事なのか分からない事には。ギャグもいちいち踏み込みが浅いわりに無駄に感じが悪くて、どうも好きになれない。下品ギャグが多い、というかそればっかりなのが悪いわけでもないですが上手い下手は確実にあると思います。
最初見たときは、画面の出来栄えとやってることのギャップがおかしいのかなと思ってたんだけど、やっぱりやってること自体がおかしいわ。間尺が合わない。
逆に言えばこんなに色々文句言われるのは、その画面の出来栄えが異様に本格的だから。画面と音楽と、役者の演技が完璧に怪獣映画なのにお話は辻褄がおかしいから。
コメディは辻褄が合わなくてもオッケーとか思ってらっしゃる?
喜劇をやりたいんなら、ストーリー上であれだけ色々尽くした手のうち最後の一つぐらいはうまく行かなきゃいけない、少なくとも物語の解決に寄与しなきゃならんと思うんですよ俺は。
あれもダメこれもダメ、最後の最後ギリギリで間に合った方法もやっぱりダメ、時間が来たら今まで一回もちゃんと説明してないウルトラマンが突然現れて助けてくれましたよかったね、って、それがデウス・エクス・マキナの本来なのかもしれないけど、こっちは古代ギリシアの演劇を見てるわけじゃなくて現代の日本映画を見ているわけなので、それだったら納得行かない終わり方をしたなりのリアクションが入らないと飲み込めないんじゃないでしょうか。

【完全ネタバレ】少林少女という大変な映画を見たので記録を残そうと思う。

序文

TBSラジオタマフル24時間ラジオ(ニコ生)の企画で、各自DVDを見ながら出演者やコメントで解説とかツッコミを入れて楽しもうというのがあるが、その課題作品が今年は「少林少女」だった。当時から大変な問題作である事で話題になってはいたが実際には見た事が無かった為、この機会に見る事にした。

で、このもつれにもつれて元の状態に戻せないステレオイヤフォンのコードのような映画を見た結果かなり混乱したので私自身の記憶を整理する為に内容をまとめる事を主目的として記述したものである。

「少林少女」はこんな映画だった

中国で麿赤児少林拳を教わる柴咲コウが修業期間を終える。

故郷に帰って少林拳を広めたいと言う柴咲の事を麿は気を制御できないのではと心配する。

電車で故郷の町に到着、町中が彼女を見てすぐ分かる。少林拳を広めたい柴咲は早速その辺の子供を少林拳に勧誘するが相手にされない。

かつての道場を訪ねるとそこは廃墟になっていた。祖父(富野由悠季)の写った写真も放置されたままだ。昔なじみの人々に話を聞くと皆拳法家のような動きは見せるし製材所には何となく邪魔な場所に木人が置いてあったりするのだが少林拳の道場はもうやめたと語り、その理由は頑なまでに説明しない。

中華料理店に江口洋介を訪ねて行く。江口洋介は先生と呼ばれているのだが、つまり孫にして孫弟子ということだったのだろう。

一方ヘリで降り立った仲村トオル。歩きながら部下の報告を聞き指示を出している。絶大な権力を誇る学長仲村トオルだが、大会議場でプレゼンを遮って何を指示しているのか、週刊誌記事によって告発されつつある悪事とは何なのか、具体的には語られないし後のストーリーにもあまり関係が無い。

ちなみにここまでの部分、実際の映像では柴咲1分、仲村1分という具合にかなり頻繁にシーンが切り替わり、初見だと何がどうなっているのか、誰がストーリーに強く関わる人物で誰が脇役なのかほぼ分からない事になっている。

キティ・チャンは中華料理店で柴咲が演じたドタバタの最中、咄嗟に手に取ったラクロスのスティック(客席の脇に無造作に置いてある)さばきを見てラクロスへの勧誘を思いついたのだろうか。(スープこぼしてたけど)該当のシーンではただ店員さんが迷惑そうにしているようにしか見えない。

そもそもなぜ江口洋介はチャーハンとスープを厨房から投げてよこすのか。普段はティンたちが受け取っているのか。だとしたら何故ここではボーっと見てるだけなのか。

江口洋介もまた柴咲の疑問には答えようとしない。廃墟と化した道場へ戻った柴咲は何かを探したいようにも見えるがとくに探すシーンもなく翌朝になる。

キティ・チャンは中華料理店からティンの朝飯を勝手に柴咲のもとへ持って来てくれる。なぜかこの映画のキャラクターたちはお互い必要な会話や連絡をしない傾向にある。朝食を持ち去られたティン達少林サッカー組の繰り広げるドタバタは食い物の件で争っているくせに食い物を粗末にする、本来包丁でやるべきアクションをバナナで行うなど、理解をこばむ作り。

キティ・チャンは柴咲の目の前で太極拳らしき動きをしながら、片言の日本語で身の上を語る。柴咲は少林拳に勧誘するが、チャンは自分のラクロス部への勧誘と引き換えで少林拳に付き合うという条件を出す。

突然大学のプロモーション映像(ここで大学の俯瞰図と仲村トオルの役職がわかる)が入るがここの学生は勉強している気配がない。

キティ・チャンは柴咲に写真入りのパスを手渡す。どうやって発行するんだそんな物。柴咲の手を引っ張って強引に連れて行くチャン。この映画は説明を省くだけではなくて説明を求められても説明しないシーンがよく入る。

といってもラクロス部の練習へ連れて行くのはまあ予想が付く。

第一声で初対面のラクロス部員たちを少林拳に勧誘する柴咲。当然総スカンを食らう。総スカン表現が徒に長い。自分たちもラクロス初心者だという部員達(混乱)。柴咲はためしにスティックを使いボールを投げる。場外まで飛んで行くボール。場外で岡村隆史が因果関係の分からないドタバタを繰り広げ、水を浴びる。

シーンは学長に切り替わる。たぶん窓からラクロス部の練習を見て、見慣れない学生が居るのを見咎めたのであろう、最近編入させた学生が居るかと秘書(多分)に調べさせる仲村。そんな記録は見つからない。さっき発行してたパスって何なんだろう。

学生データベースにアクセスしていると思しきノートパソコンでなぜか同時にニュースを見る秘書。ジャーナリストの謎の死を告げるニュースを見てハッとして仲村トオルのほうを見る。これは多分仲村トオルの手の者による犯行という事だと思うんだが、それについてこの後金輪際出て来ないのでタマタマだったのかもしれない。

そんな事ってあるかね。

岡村隆史柴咲コウがグラウンドで初体面。岡村の役職を説明するのがキティ・チャンのため片言で良く聞き取れない。申請許可って何だろう?

ここで柴咲は岡村を知らないが岡村は柴咲の中華料理店でのドタバタを見ていたという事を示す回想が取って付けたように入る。

CGを使ったチャーハンを作る江口に、チャンが柴咲のラクロス部編入を知らせる。

その頃柴咲は道場の建物自体の修繕に取りかかっていた。金槌を持って作業している風だが具体的に何をしているのかは分からない。

閉店後の中華料理店の厨房で1人鏡を見て考え事をする江口。

翌朝、ラクロス部の練習に顔を出す江口。学校関係者だったのか? いやそれよりヒゲ剃って来たのか? 女子大生に合うからサッパリさせて来たのか?

柴咲の投げた真横に変化するありえないボールをベアハンドキャッチした後、スティックの網の中に正確に投げ返す等でラクロス部員を威圧する江口。とくに何の説明もなしにラクロス部コーチの座に納まる。ラクロス部員たち「この人何者?」「そんなこと、どうでもいいのよ!」よくないよ。それに中華料理店はどうするの?

と思ったらラクロス部員がみんなで中華料理店に行って会食している。厨房の江口に少林拳はどうするのかと詰め寄る柴咲。だが江口は「強くなってどうなる」と取り合わない。普通に会話が成立してれば最初の日に終わってる話だ。

道場で祖父の道着を発見(探していたのはこれだったらしい)した柴咲の所に現れるチャン。先生に止められてもコッソリ少林拳を教えてくれればいいと話す。あれって止めてたのか。そして二人の修行シーン(長め)。

仲村、柴咲の編入許可申請が二日前に来ていた報告を受けながら筋トレ。

江口コーチ、自信満々でラクロスの指導。しかしこの中にラクロスのルールを知っている人はいるのだろうか。

少林拳の基礎を取り入れたコーチングはどうやら功を奏しているようだが「コーチが変わるとこうも変わるもんですかね」って君ら初心者だった筈では? 前任コーチって誰? 岡村隆史

柴咲はなぜか江口コーチに冷たくあしらわれ、練習試合ではチームワークを乱してチームを敗戦に導いてしまう。ここの上手くいかない描写はおもにパス要請を無視して突っ走る、シュートしても思った方向に飛ばないというシーンの連続になっているのだが、ボールのイレギュラーっぷりが逸脱しておりチームワークの話とは思わずに見てしまう。ここは柴咲がチームの信頼を失い一度落ちるシーンの筈なのだが、そもそもこれ以前にも柴咲の並外れたシュートがゴールに入っている描写がほぼ無いので、むしろ今までなんでみんなから信頼されていたのかが分からない。 岡村隆史はたしかラクロス部監督だった筈なのだが中華料理店の店員たちと一緒に場外の芝生からオペラグラスで試合を眺めながらビデオを回しながら3人で面白くないコントをしている。ここの笑えなさは特筆に値する。

柴咲はチーム全員から2度目の総スカンを食らい一人別方向へ去って行く。着替えとかどうするの。

1人道場へ帰った柴咲は道場脇の草っ原で、そこには居ないメンバー達の名を呼びながらチームワークのイメージトレーニング。それを後ろからそっと見ているキティ・チャン(地獄)。

日が変わって何らかのトレーニング中と思われる柴咲は道ばたの芝生に寝っころがって考え事。グラウンドの少年サッカーのコーチが張り上げる大声が耳に入る。このサッカーコーチのキャラが妙に濃い。なおいきなり少年サッカーに混じって練習を始めてしまうにあたって、冒頭に出て来たスポーツ用品店の奥さんが出て来てフォローしてくれるんですが、もしかするとこのコーチ、トータス松本を想定して作った役だったんじゃなかろうか。とこれは下衆の勘ぐり。

なおこの練習中、グラウンド脇の道をラクロス部員たちが通りかかるのだが、なんでサッカーやってるの?→ラクロスには戻れないよね→(ああしてチームワークについてマジメに取り組んでいるんだな(ニヤニヤ))と、この表情の変化だけで実際に和解が成立してしまうのがこの映画の凄い所。

その証拠に次のシーンから劇判がいい感じの曲になり、一人で少林拳の稽古(もしくは太極拳)をやっている柴咲の隣にはいつのまにかチャンが。サッカーの練習に通ううちにちゃんとパスを出せるようになり、やがて二人だけだった少林拳の稽古(もしくは太極拳?)にラクロス部員が参加するようになっていく。サッカーでチームワークができるようになると(なったらしいが、サッカーのコーチに認められるなどの描写はもちろん無い)普通のパスしか打たなくなるのはどう考えれば良いのか。良い感じのBGMが続いている。

そうしてある日、柴咲とチャンの二人が芝生で寝転んでいるとラクロス部のみんながラクロスの練習に二人を誘いにくる。

ラクロス部員たち「何やってんの?」「練習!」「ハヤクー!」笑顔で手をふるチャン、次第に笑顔になる柴咲、駆け寄る部員たち。

つまり柴咲は今までラクロスの練習からはハブられていたらしい。

何だこの段取りは。

どう考えても少林拳の稽古にラクロス部が参加しだすタイミングがおかしい。

さらにおかしいのはその次のシーンから柴咲がラクロス部の練習を仕切って山の中で特訓したりしてるんですが、江口洋介はどこに行ったんですか。

……ラーメンを作っていました。

ラクロス部のみんなで和気あいあいと食事、新ユニフォームをみんなで決める、そしてみんなで少林拳(木工所の入口にあった木人がピンクに塗られて草っ原に立ててある)そして料理をしている江口洋介の元にラクロス部員たちが、柴咲と一緒に練習がしたいと必死の訴え(禁止されてたのか? ちょっと巻き戻して見てみたが、一緒に練習する事を禁じているシーンは無かったぞ。)

江口「わかったぁ! わかったわかったぁ!」ヤッター! 

もしかして時系列シャッフル演出なのかな。

次のシーンで練習試合に勝って、

廃墟だった道場の修繕もみんなで手伝えばテキパキ進み、

練習試合に大差で勝って、

少林拳の稽古に道場の清掃、

練習試合に大量得点で勝って、なぜか相手チームも一緒に喜びを分かち合い、

道場にはついに灯りがともり、

さらに道場にラクロス部の新ユニフォームが届く(部室とかないの?)。これらのシーンがセリフ無しで、さっきから続いている良い感じのBGMに乗ってパッパと切り替っていく。

すっかり復旧した道場の片隅には富野由悠季を中心に旧門下生が並んだ写真が。後ろに並んでいるのは仲村トオルじゃないか? という事に最初は気付かなかった。富野由悠季の顔ばっかり見てしまうからだ。でも皆は、学校のプロモーション映像にさえ出てくる学長が写真に写りこんでいることに気付かないのだろうか、それとも、そんな事どうでもいいんだろうか?

かくして新道場でラクロス部のみんなと型の訓練、竹林の中でもみんながエフェクトの付いた球を投げられるようになる。柴咲ニッコリ。

ここでいい感じの劇判が終了して江口洋介としんみり語るシーン。「形じゃないよ、心だよ」とかどうも具体的な話にならないが、要するに柴咲は気の力が強すぎるので戦いに身を投じれば気の力に飲まれ、ダークサイド的な闇に落ちてしまう可能性が高く心配だ。俺が守ってやるからお前は戦うなよ、という事を言われる。

その夜道場で仲村トオルの手の者と思しき黒バトルスーツの集団に襲撃される柴咲だが先生の教えを守り「私は戦わないよ」と宣言。しばらく挑発をしたのち道場から出た黒集団の1人「やはり戦いません」とどこかに通信。

ジムっぽい場所で電話に出ている仲村トオル。ジムから出ながら電話機をもう一度耳に当てる。

厨房で電話に出ている江口洋介。店を抜け出す江口。そこへ駆け込んでくる柴咲。途中で会わなかった?

道場で待ちながら回想する江口洋介仲村トオルにボコボコにされながらも、柴咲の行き先は教えない。

仲村トオルが到着。「なぜ戦わない?」江口さんは戦わなきゃダメな立場なんじゃないの? 守るんでしょ?

江口「アイツの力をひきだしてどうするつもりだ?」仲村「随分待ったよ。……俺はただ、戦いたいだけだ」

江口洋介、説得を試みるが単にボコボコにされる。

仲村トオル「来ないのならば、来るようにするまでだ」そして携帯で指令をだす。「彼女が大切にしている物を全て壊せ。そしてその憎しみを、私に向けさせろ」

あらすじかよ。もうちょっと具体的に命令しないとダメなんじゃないか。

道場に駆けつける柴咲コウ。同じ所を行ったり来たりである。

さっき帰った黒集団がまた来て今度は道場に火をつける。乱暴な事をするね。

店長が帰って来ないのに閉店している中華料理店に岡村がやってくる。面白くないやりとりをしていると黒っぽい人たちが店にもやって来て、キティ・チャンを誘拐する。応戦する店員たち。だが厨房のガスが全開で漏れていることを指摘する岡村。全員で急いで逃げ出す。

爆発する中華料理店。店員たちと岡村は田んぼに逃げこんでドロだらけになっている。中華料理店の燃えかすと思しき火球が隕石のように降り注いでいる。

燃え盛る道場に祖父の道着を取りに戻る柴咲。フラッシュバックする道場再建の思い出。

江口はなぜ自分が非暴力主義になったのかを語る「あの頃の俺は、少林拳の教えを破った。だから自分で自分を破門した。」普通はそう言う事を言ったら、いつ頃、何をやらかして、どんな目にあって反省したのかを説明するシーンが入ってしかるべきだと思うんだが、ここではこの適当なセリフ以外なし。

「お前の持つ秘めた気の力は凄まじい」と言われて柴咲は祖父の死を知らされたときの事を思い出す。多分電報だと思うけど「祖父死ス」とだけ書かれた紙を手に持って悲しみに暮れる少女。あたりに猛烈な嵐が起こり、指導の僧や同門の子供たちが飛ばされたりする。

「その先に待っているのは、飲み込まれたら二度と戻れない戦いの闇だ」なんとか柴咲が戦うのを止めさせようとするが、駆けつけた店員たちに(なぜ駆けつけるのか。警察とか消防署はないのか)キティ・チャンまでもがさらわれたと聞いては説得にも限界がある。「先生、私は戦いの闇には落ちないよ。だって、私を守ってくれた人たちがいるから。今、大切だと思う人を私は守りたい。先生だって、私にそうしてくれていたじゃないですか。」いたかなあ。

「必ず、帰ってこいよ」説得されてるのかよ。

夜明け前の大学に向かって行く柴咲。祖父の白い道着を着ている。所々の止め絵はかっこ良いんだよなー。

黒い人たちが迎撃してくるのをやり過ごしながら建物に入って行くと早速黒い道着の中ボス風の人が立ちふさがるがハイキック一発で倒す柴咲。

ケイトー型マスクの黒い集団(わらわら向かってくるだけでさっきの人たちと何が違うのかは特にわからない)をかいくぐって階段を上る。

踊り場の大きな銅鑼を振り回して何人か墜落させる(CG)

ついでに自分も落ちる。何やってるの。

吹き抜け天井のステンドグラスをぶち割って中華料理店員の二人が降りてくる。「実は俺たちも少林拳の普及のために来たんだ」「上手くいってはいないが」ここでそれを説明するのはいくらなんでも……。

玄関ホールの敵を二人に引き受けてもらって上階へ。

お、鏡の間かな?とおもった場所が鏡の廊下だった。直進で通り抜け可。

次の階段ステージではどこからとも無く多量のスリケンが飛んでくる。刃物が道着の袖をかすめる。傷らしき物は後にも先にもこれっきり。

その後ジャンプでギリギリ届く段差に捕まってその下の排気口かなんかを足で割って室内に入りこむ。暗くて良く見えん。

モニターの並んだ部屋には監視員も居らず、写っているのもちょっと前のリプレイ映像の様子。

その後はカラテカみたいな落ちてくるフェンスに行き先を阻まれ、照準を合わせる画面が出るが、銃撃ではなく狙いすましたツープラトン攻撃。ロボなの? 2人居たけど難なく蹴りで撃退。撃退すると通せんぼしていた電流フェンスが上がって次のステージに行けるようになる。完全にゲームである。

そこを抜けると廊下の行き止まりにブルースリーの偽物がいてヌンチャクを振り回しているが(もっとモノマネの上手い人、いくらでもいるのでは?)あえなくハイキック一発で倒れる。

柴咲コウわりと大暴れしてる雰囲気だけど、戦いの闇問題はこの程度の戦闘では発生しないんだろうか?

なぜか画面は先程の玄関ホールに戻るが中華料理店員と玄関ホール雑魚たちの疲れ切った殴り合いだけが続いている。

柴咲コウ、一言で言って死亡の塔っぽい障子に囲まれた部屋に到着。今度は一度に3人が相手だ。蹴りを受けて飛び込んだ小部屋には掃除用具と一緒に各種道場の看板がみっちり飾られている。

箒とバケツと雑巾をラクロスのスティックのように使って3人同時に目つぶしをして打撃を食らわせた所で「そこまで」の声。

なんと岡村隆史である。このへんの敵からオーラが出ます。「待っとったでぇ。全部見させてもろとったわ」と言うけど、だからって独特の弱点を突くとかそういう細かい事はして来ない。普通にカンフーをしている。

この映画唯一の、柴咲コウが顔を蹴られるシーンこそあれ、謎の間があってからの逆襲の一撃(柴咲の体から赤いオーラが出るが、特に殺意の波動に目覚めた様子はない)壁にヒト型の穴を開けて玄関ホールまで落ちる岡村。

建物同士の位置関係もそうだが部屋同士の位置関係がさっぱり分からん。

問題のラスボス(仲村トオル)戦である。エジプト風の絵が飾ってある薄暗い校長室に入ると仲村が「遅かったな」とか言って戦闘開始。とくに躊躇無く戦う柴咲。

部屋のまん中に思いの外深いプールがあって落とされたりするが、カンフーの力なのか説明なく水面上に立てたりする。ジーザス。

キティ・チャンはこの部屋に囚われてはいるものの別に縛られたり見張りを付けられたりはしておらず、ソファーの上で普通に二人の戦いを観戦している。ちなみに助太刀もしない。

その後も水面で戦ったり、打撃を受けた方が水に沈んだのち飛び上がって来たり、二人で水中で戦ったり、仲村が水中で黒っぽい波動拳みたいなのを発射したり(泥水に見える)、何が出来て何が出来無いのか、水中では呼吸ができなくて苦しいのか、普通に喋ってるから特に困らないのか、決まり事の分からない戦いが続くのだが、やがてプールの水が溢れ、天井から吹き出し、戦う二人とともに空中に舞い上がる。空中で大の字になって、光に包まれた柴咲が仲村トオルをやさしくハグ。何これ。

それと同時に精神世界(?)に入って行く画面。真っ暗な画面に広がる水の波紋。やがて目一杯ボカしのかかった木漏れ日のような光が広がる。

オーバーラップして切り替って行く様々なイメージカット(古い時計の文字盤。キラキラと太陽を反射する海の波。青空を高速で雲が流れ、明滅する太陽。木漏れ日。草っ原を歩く少年の足。仲村トオルの目のアップ。板の間に落ちる手の影。年かさの子供に手を引かれる幼児の目線。はばたくシルエットの鳥。草ボウボウの公園。空手の稽古をする子供達。海に落ちて行く夕陽。乳を吸う赤ん坊、空手着の幼児などなど)のバックに、静かなピアノ曲と、モワモワにエコーのかかった柴咲コウの読む、なんだかぼんやりとした言葉が聞こえるような聞こえないような、妙なディレイが入ったりするポエム。映像のほうもオーバーラップのスピードが不安定に変化したりして、どっちかというとホラー映画めいた編集になっていてコワイ。

これはカメラが現実世界に戻ったら仲村トオルの体がむちゃくちゃに膨らんだりしてる奴では?と思ったが実際には仲村トオルの目のアップから涙が落ちるだけなので安心。

二人とも無事なままもとの室内へ落下、プールは塔ごと崩壊して水を四方に撒き散らす。

光に包まれたまま、ついに地面まで降りて来た二人は、向かい合って、仲村トオルは童心を取り返したのか一瞬子供の姿になって、柴咲おねえさんに教えを請う体勢になっている。なぜ柴咲コウまで一瞬小さくなるのか。そしてなぜ何回も小さくなったり戻ったりを繰り返すのか。ステータス異常なのか?

そういえば建物が崩壊したわけだけど人質のキティ・チャンは生きてるのかな。とおもったら上から笑顔で「大丈夫ー?」って。

場面は変わってラクロス部員が試合の準備をしながら、柴咲の到着が遅れていることを気にかけている。

そうすると林の向こうからヘリが飛んで来て、空中のヘリから元気に飛び降りてくる柴咲。もしかしてさっきのアレが明けて同日ってこと?

うわー(完)

スタッフロール開始。

試合が始まり、本編では練習している気配すらなかったラクロスでの連係プレイから柴咲のゴールが決まったり、監督をしている江口のとなりに同じ服で中華料理店員の二人が立っていたりするがどういう事情かは分からない。

ミヒマルGTの主題歌が始まりながら、ラクロス部が試合に圧勝した様子を伝える校内広報ペーパーを見ながら満足げな岡村監督。

主人公に戦いで敗れたのに、全く元の立場を失わない悪役とは随分斬新である。戦いの無意味さを物語っていますね。

少年サッカーの子供達が皆で少林拳っぽいステップを練習しているシーン。

ドーム型のスタジアムでラクロスの試合が行われ、超人的なプレイを見せつける主人公チーム(ボールが地面にもぐって相手ゴールの地面から飛び出して来たりする)。スコア50対0の表示。

何らかの大会を勝ち進んでいるらしく、さらに巨大なスタジアム(サッカー場っぽい)での試合シーンに切り替る。超人的プレイで優勢に試合を進める主人公チーム。江口コーチはなぜか客席に居て上機嫌で手を叩いている。カメラが回り込むと隣にいるのは仲村トオル。二人ガッチリと握手を交わす。……店を爆破されたり道場を燃やされたりしたと思うんだけど、もう記憶もしくは自我を失っているとしか思えない。

(この辺で歌が終わる)

少林ラクロス部と化したチームの超人的パス回しによってボールは火をふき、龍になり相手ゴールを破壊してスコアはついに100対0に! 人死んでない? 

ナンバー、ニューズウィーク、タイムの表紙を飾る少林ラクロス部。合間合間に少林拳の稽古に励む子供達のカット(動きは適当)。もはや負け知らずのラクロス部たちは新しい試合に向けて気合いを入れるのであった。

おしまい。

 

こうして全てのシーンを列挙してみても、まるで夢日記のようだ。これほどまでにあらゆる辻褄が破壊された映画は後にも先にも見た事がない。私は最初見た時ストーリーをすっかり見失ったので、もう一回落ち着いて見て、全部のセリフを聞き取れば、面白いか面白くないかは別として、どういうストーリーの映画だったか理解はできるのではないかと多少期待していたのだが、無理な物は無理だった。これはどう言うストーリーにするか最後まで決められなかった映画だ。

ちなみにレンタルDVDで見ていると、本編がすべて終わった後、3時間にも及ぶメイキング映像が始まるのだが、一体どういう神経なのか。さすがにメイキングまでは付き合ってられないよ。